今年になって中国のLCC春秋航空の日本攻勢が続いている。
2010年の上海浦東空港―茨城空港間の就航以来、2011年に上海浦東-高松空港線、2012年に上海浦東-佐賀空港線が開設され、徐々に国際線の就航路線を増やしてきたが、今年になって日本国内に関係航空会社を設立したこともあって、一気にその勢いが加速している。
今年の3月にまず上海浦東―関西空港線を就航させたのを皮切りに、7月には天津―関西空港線と武漢―関西空港線、重慶-関西空港線をほぼ同時に就航させた。
そして8月1日には日本の現地法人として設立した春秋航空日本が成田空港―広島・佐賀・高松線を就航させ、日本の国内線ネットワークにまで進出した。
さらに今月10月26日に上海浦東―札幌線の就航を行ない、上海浦東―茨城便も週8便化することが発表されている。
実にどこまで増やす予定なのかと思う程の矢継ぎ早の攻勢だが、恐らく今後も進出はどんどん続いていくに違いない。
まあ、ここまで外国の航空会社(春秋航空日本は形式上は日本の航空会社だが)に日本での攻勢をされてしまうと、日本の航空会社は何をやっているのかという気も起らないでもないのだが、実はこの春秋航空の日本路線を支えているのは、大半が中国から日本へ向かう団体ツアー客なのであり、必ずしも日本の航空会社が支えている航空需要とは一致しない面がある。
もちろん、日本と中国を結ぶ路線であるから日本の旅客もターゲットの一部になっていることは否定できないが、やはり主たるお客は中国から日本へ向かうツアー客となっている。
実はそのための日本国内線の開設でもあり、例えば成田―広島線が開設されたのも、上海から高松空港へ降り立ったツアー客を瀬戸内観光させた後に、関東へ移動するための手段として用意されたと察して間違いなく、いわば自社観光バスの飛行機版のような存在として用意されたのだと思われる。
(羽田は発着枠が無く、茨城も自衛隊共用なので中国系航空会社の乗入れは進めにくく、成田が拠点になったと推測される。)
つまり日本という外国において、中国のツアー客を日本国内で移動させるための航空便を外部調達すると非常に高額になってしまうし、キャンセルや人数調節などの面で調整が面倒なので、自社便で運行してしまうという発想で生まれたようだ。
もちろん、日本国内の航空需要まで吸収してしまえという意識もあるとは思うが、やはり主目的はそこではないだろう
外国に航空会社まで設立してしまうとは何と言う大胆なビジネス戦略かとは思うが、実際に中国にはそれだけの旅行需要が存在する。
以前、2011年09月18日「中国人の日本行きビザ申請の現場」という文章を書いたが中国には日本人が想像するよりはるかに多い日本行き旅行需要があり、それだけのまとまった需要があるなら、高額のコストを現地の旅行会社や航空会社に払うより航空会社を自ら設立してコストを下げるというのは当然の選択とも言える。
まあ、日本人のための航空需要ではないので、日本の航空会社が手を出さないのも理解できるが、やはりせっかくそこに航空需要が転がっているのに日本の航空会社がビジネスチャンスとして生かせないのも勿体ないという気がする。
またこのビジネスモデルは、日本のLCCでも生かせるという気もしており、既存需要を見て路線を開設することも大事だが、国外から需要を引っ張りこむという発想もあってもいいような気がする。
いずれにしても日本の航空会社も春秋航空に負けず、是非頑張ってもらいたい。