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イベントは人を育てる

昨日書いた万博PR曲の盗作疑惑だが、万博事務局が岡本真夜さん側に仕様許諾を申請し本人がそれを快諾したとのニュースが伝わった。

 事務局としては、万博開幕まであと10日あまりで開会式から何からぎっしりプログラムが組まれている中、あの曲を外してスケジュールを組み直すのはとても間に合わないだろうし、今更新たな曲を探したりする時間的余裕もなく、あの曲を万博の舞台から葬り去ることはとても現実的でなかったのだろうと察する。

 もちろん国の威信をかけて、無理やり曲を探し新たにやり直すことも選択肢としてあったかもしれないが、全体への影響を考えればどう考えても現実的な判断ではない。パビリオン建設の遅れのみならず、開幕からこんなことで失敗してしまうことは、ここに向けて何年も準備してきた事務局にとっては耐えられないことであったのだろう。

 つまり今回何が何でもあの曲を使うしかない状況に追い込まれていたということになる。

 そしてこの状況の打開にはもう正面突破しかなくて、自国の万博PRソングに他国の人間が作曲したものを使うのかというような国内批判を恐れてはいられなくなった。

 幸いにも今回のイベントは「国際博覧会」という世界を紹介するという意義のイベントで、必ずしも自国の国威を掲揚する場ではなかった。
 故に経緯はどうあれ国内向けに外国の曲を使う言い訳は辛うじて立たせることができる。
 さらに、あの曲が彼女の曲であることを認め、正式に利用許諾を申請して盗作ではなく手続き不備の無断使用だったとの形ならば、彼女の曲が公式ソングになるわけで、相手方の顔も立てることが出来、しかも今後は堂々と晴れて曲を使うことが出来る。
 当然そこにいたる途中には国の名誉に対するプライドとの葛藤があったかもしれないが、今回そこを収めイベントの推進者として極めて現実的な判断をしたように思える。

 もちろん岡本真夜さん側にすんなり快諾させるためには、金もそれなりに積まなければならなかったも知れないが、万博にかけてきた費用の総額を考えれば、彼女に多少の利用料を弾んだところで、その程度のお金で名誉が解決でき、万博という大イベントがスムーズに進めることができるなら安いものと判断したのだろう。
 
 今回正式には謝ってはいないかもしれないが中国人が全体のことを考えて誤りを認め、現実的な判断をしたところは素直に評価したい気がする。

 この事務局の人たちは万博準備を通じて、世の中に対してかなり現実的な判断ができるようになったのではないかと想像する。

「イベントは人を育てる」これは私の持論である。

上海ワルツ:
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