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朝ドラのパンパカパーンへの疑問

今朝たまたま見かけたNHKの朝ドラ「ブギウギ」の中で、戦後まもなくの設定の中で登場人物がパンパカパーンというファンファーレのオノマトペのセリフを話していた。

 どうやら、進駐軍にもらったチョコレートをサプライズ的に男性に見せてプレゼントするための演出という意味であったようだが、この「パンパカパーン」は果たしてこの舞台の時代の人々が知っていたのだろうかと気になった。

 このパンパカパーンというオノマトペの原曲は、もともと20世紀フォックス映画のタイトル画面に出てくるファンファーレで、ラジオ放送で言うジングル様な曲であり、この曲ができたのは1935年のことである。

 そしてご存知のように日本とアメリカは1941年にアメリカ相手に太平洋戦争を始めてしまったので、それ以後アメリカに関する映画や音楽は敵性文化となり、日本の国内で流行することはありえない状態になる。

 従って、この20世紀フォックス映画の作品が日本で日本人に認知される可能性があるのは戦争を始めるまでの6年間か、終戦後のこの舞台背景までの数か月となる。

 しかし戦後というのは幾ら進駐軍が居たとはいえ、映画が流行するような状態にないことは想像するに難くなく、まあ可能性がないとは言えないのは戦前の6年の間の方である。
 ただ、少なくともウィキペディアなどでは20世紀フォックス社制作の映画が、戦前に日本に持ち込まれてヒットしたような記述はなく、そういった作品は見当たらない。
 もちろんウィキペディア程度の情報では正確な精査は出来ないのだが、時代状況から鑑みる限り、20世紀フォックス制作の映画がドラマの役の女性が知るほどに流行っていたとはやはり考え難い。

 また日本国内的にも、このパンパカパーンの認知が広がったのは 横山ノック・青芝フック・横山パンチの3人の漫画トリオが「今週のハイライト」というギャグを使った際に、演出のオノマトペでつかったことがきっかけであると言われており、もちろんそれは戦後間もなくではなく、もっと後の時代の1960年以降の話である、

 故にこれらの状況から考えると、敗戦直後のその年にこういった「パンパカパーン」のファンファーレの音が世の中に認知されていたとはちょっと考えにくいのである。

 もちろん上述のように1935年から1941年の間に何らかの20世紀フォックス作品を見て影響を受けたり、或いはブギウギの登場人物は音楽業界にいる人たちの集団であるから、パンパカパーンをどこかで目にして耳に残ったということも不可能な話ではないが、やはり時代考証的には微妙な感じである。

 今でこそパンパカパーンというのは誰もが知っているような演出のオノマトペではあるが戦争直後には流行っていたとは推測されない状況であり、NHKの朝ドラの演出としてはちょっと勇み足だったのではないかと感じている。

上海ワルツ:
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