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気軽にメリークリスマスと言うなかれ

 最近上海でも当たり前のように、12月になるとクリスマス商戦が始まり、デパートの看板や新聞の広告にMerry Christmasの文字が躍る。

新聞のクリスマス広告

 まあ日本でもごくごく当たり前の光景ではあるのだが、よくよく考えるとこの「メリークリスマス」と言う言葉はキリストの誕生を祝う言葉であり、キリスト教信者の言葉である。

 それを我々日本人は宗教観に無頓着のため、単なる年末商戦のネタとして利用しているが、敬虔なクリスチャンを除いて本当の意味でのキリスト教の宗教観をもって「メリークリスマス」という言葉を遣う人はかなり少ないと思われる。

 そのくらい日本人は宗教に無頓着である。

 上海でもこの状況は同様で、敬虔なクリスチャンが街全体にいるとも思えず、かなり多くの人間が便乗してクリスマス商戦を騒いでいるに違いない。

 まあ、このようにいまや元のキリスト教を離れて一般人の共有語のようになってしまっているような「メリークリスマス」なので、信者でなくてもいつでも誰でも普通に使って良いような気もするが、実はキリスト教以外の宗教の信者からすると、この話は簡単ではないらしい。

 例えば、日本のように政教分離が原則の国の政治家が「メリークリスマス」といえば、他の宗教からすれば宗教的メッセージとして受け止められ、逆に政治問題化してしまう可能性があると言う。

 アメリカなどはもっと深刻で、キリスト教信者は確かに多いが、ユダヤ教信者なども無視できないほどの勢力で存在し、さらに対中東的な立場から言えば、中東和平へのアプローチが、イスラムの世界に対する宗教的侵略であるとの印象を避けるために、大統領などは極力宗教色を排除する配慮が必要らしい。

 ただ、あまりそこへ気を使いすぎると今度は共和党の大統領はプロテスタントの支持基盤が大きいので国内的に支持されなくなってしまう。
 故にそのバランスというかさじ加減が非常に難しいらしい。

 元々中東紛争そのものが宗教的対立を背景にした紛争であり、宗教的な対立は戦争にまで発展する良い例であり、我々が普通に使っている「メリークリスマス」と言う言葉もキリスト教そのものを表す言葉であることを忘れてしまうといらぬ対立を招いてしまうことになりかねない。
 あまり気軽にメリークリスマスというなかれである。

上海ワルツ:
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