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ニヤケ顔でリストラを語る日本人

 以前の会社で、中国人社員の待遇にトラブルを抱えていた時があった。

 まあ内容そのものは冷静に語れば済む話であったようなのだが、中国人社員側が頭に血が上っていていて、取りつくシマがないような状況になっていた。

 そこで交渉にあたっていた日本人が業を煮やしたのか私に

「リストラしちゃおうっか?」

とニヤケ顔で言ったのである。

 私はその表情と言葉に気色悪さを覚えた。

 まあ、会社の業務の進行に支障があれば、リストラというのは一つの経営判断して下さなければいけない事項かも知れないが、少なくともその決定には人一人の生活が懸かっており、また会社の業績にも影響が出る判断なので、ニヤケて言う言葉ではないはずである。

 それにも関わらずその日本人は、ニヤケた言葉でリストラを口にし、どうも権限を行使できるのが楽しいかのようだったのである。

 普段からのその日本人は、中国人と日本人を同じ給料でアルバイトさせようとか、耳あたりの良い公共的正義発言を振り回していたが、あまりにも優等生的な発言というか状況を考えない言葉に本当にそう思っているのかと以前から私は懐疑的だったのである。

 そこへこのニヤケ顔のリストラ発言である。

 この言葉を聞いてこの日本人の意識の根底の差別意識を見た気がしたし、これ以降この日本人を決定的に信用しなくなった。

 私とて、中国人やその他の外国人に対して100%差別をしていないかと言えば、恐らくそんなことはなく、他民族や他国人、他人に腹を立てたり意図的にそのテリトリーへの接近を避けたりすることはある。

 しかし、表立っての差別は原則失くしたいと思っており、考え方などを批判することはあっても人格までを否定するような発言は避けている。

 しかし上述の日本人は心のどこかに階級意識があり、その意識が言葉になってでてきたような印象だった。

 まあ民族とか国家とかそんな大げさな事でなくても、人一人の人生を考える力があれば、ニヤケ顔でリストラなんぞ口に出来ないはずなのであるが、どうも間違った意識の人がたまにいるのである。

上海ワルツ:
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