日本でマイナンバーカードを巡る騒ぎがニュースを賑わしている。
やれ他人の証明書が出てきただの、他人の顔が映ったカードが送られてきただの制度の信用性を揺るがす話があちらこちらで聞こえる。
まあこれらの事象の全てをチェックしたわけではなないが、ほとんどがシステムエラーというより、手順を踏んで正しく処理すれば防げたヒューマンエラーばかりのような気がする。
特に顔写真の不一致などは撮影段取りが悪いのであり、写真を撮影した段階で、データを結び付けておかなければ、見知らぬ人の顔写真など後から判別できるわけがない。
中国でさえ、そのあたりは段取りが確立しており、ビザ更新時の写真などは撮影する段階でパスポート情報と紐づけられて管理され、その後の様々な資料に使われていく。
この処理は情報処理においては当たり前の手順であり、むしろ日本のお役所の管理というか登録段取りが稚拙すぎると言える。
まあこのような情報を取り扱う人間の不慣れさや、その失敗を非難する日本の世論の現状が、デジタル後進国として周回遅れの現状の現れであるとも言える。
逆にこういった騒ぎが起きている状況こそが、ようやく日本社会がデジタル化へ踏み出した現れでもあり、個人的には前向きに捉えている。
また私自身が中国で学んだ一つの姿勢というものが、「とりあえずやってみる」であり、「下手な考え休むに似たり」という言葉の実戦であり、今回の状況を前向きに捉える要因になっている。
要するに最初からうまくいくわけはないのであり、致命的な欠陥でない限り、とりあえず走りながら考えるということが大事かと考えているのである。
そんなことを言うと、今回起きているようなミスは致命的だと言われる方もいるかもしれないが、今回起きたようなミスがアナログだと起きなかったのかと言えばそんなことはなく、例えば同姓同名同一生年月日の人を取り違えてお金を振り込んでしまったというミスを最近聴いたが、これこそアナログ処理時代でも起きているであろう事象であり、寧ろマイナンバー的処理の方がミスは起きにくいはずである。
最初の設定さえ正しく行われていれば、その後はミスが起きないはずであるが人が判断して処理すれば思い込みはいずれ起きてしまう可能性は否定できない。
従って現在マイナンバーカードに関連して起きている問題に関しては、私は特に心配していない。
ただ私とて、今のマイナンバーカード制度に関して全く問題がないとも思っていない。
何が問題かと言えば、政府におけるマイナンバーカードの位置づけがどこかあいまいなのである。
個人を示すIDカードの役割なのであれば、日本国籍を持つ者全てに発行すべきであるが、実はそうはなっていない。
あくまで住民票をベースに発行されているカード・番号のため、外国へ転居した者には発行されないし、逆に日本居住の外国人には発行されている。
そもそもこのカードの原点は納税者番号カードということであり、身分証明書とは違う目的で作られた番号体系で、お金の流れの把握を目的に作られた個人識別番号なのである。
それゆえに外国居住の日本国籍保有者は排除され、逆に日本在住外国人は含まれている。
それを、普及を目的として保険証機能など色んな機能を持たせようとしているところから話がおかしくなっている。
身分証明書目的ならそれに特化した発行体制にするべきで、外国居住の日本国籍者を排除すべきではない。
しかし、日本には残念ながら国民を把握する手段の基礎が住民票となっているため、あいまいな形でしか人員把握が出来ないのである。
本来、国籍ベース、本籍ベースで番号を振り、そのオプションとして外国人を追加するのが本来の身分証明書のあり方だと思うが、そもそもの基礎が住民票という中途半端な把握の仕方のため、そこをベースにしたマイナンバーカードも中途半端な存在となっている。
これと並行して、同性婚の問題や選択制夫婦別性の問題、国際結婚における子供の国籍など、現在の戸籍制度が出来た頃には想定されなかった問題が社会で議論され始めている。
これらの問題もマイナンバーカードの問題も日本の戸籍制度・住民票制度が住民の多様性への変化に追いついていない制度の穴と捉えることが出来、今後解消していかなければならない問題になっている。
今後、住民票制度や戸籍制度を根本的に作り変える必要があるのか、或いは時代に合わせて上手に変化させていくことが出来るのか、日本政府の対応にかかっている。