先日、人に頼まれて最近亡くなったある方を偲ぶ会のBGMの準備を頼まれた。
はて、昔日本にいた時に結婚式のBGMはさんざん利用してきたが、葬祭系のBGMは初めてであった。
まあ葬祭といっても正式な葬式ではなく有志が集まる「お別れ会」であったため、どちらかというと会食中心で宗教色のない会である。
故に一面おごそかにしながら、湿っぽくなり過ぎず和やかな雰囲気の音楽BGMが必要とされると判断し曲を集めることにした。
でいろいろライブラリーをひっくり返して選曲していったのだが、実はウェディング用のBGM集CDが結構使えることが判明した。
もちろん、結婚行進曲など結婚そのものを表す曲は当然使えないのだが、それ以外の恋愛が歌詞に絡むバラード系の曲というのは、意外にも葬祭系の儀式にも使えることがわかったのである。
例えば今回利用した曲の中にはMisiaさんの「Eveything」の歌詞無しピアノ演奏版ヴァージョンを含めたのだが、この曲は基本は愛を歌う歌ではあるが、決して甘い歌ではなくどちらかというと遠く離れてしまった相手を想う悲しい曲調であり、その曲調が実は同様にもう会えない故人を偲ぶシーンでも合うように思えたのである。
このほかにも「Let it be」とかいずれもウェディングBGMから何曲かピックアップしたが、いずれもしっくりくるという印象だった。
そのほか冬ソナ(古い!)の「My Memory」のヴァイオリンバージョンや「涙そうそう」の二胡バージョンなどを色々織り交ぜて1時間くらいのBGMを組んだのだが、いずれもウェディングで使ったことのある曲であった。
(10年前でライブラリー更新が止まっているので新しい曲は入れられなかったが・・・)
で、実際に本番で曲を流した場面にも立ち会ったのだが、参列者はどう思ったか分からないが私的には非常にマッチングしていい選曲が出来たのではないかという印象だったのである。
さて今回どうして結婚式と葬式の曲が共通で使えるのかをいろいろ考えてみたが、私の結論としてはいずれも人生の区切りを示す儀式だからではないかと考えた。
葬式も結婚式も、本人や周りの人にとっては人生の一区切りのタイミングであり、これまで歩んできた時間を振り返り噛みしめる時間になる。
そういったシーンにおいて、実は過去を振り返り人を想うと言う意味では、感情の状態は結婚式も葬式も似たような状態なのではないかという気がするのである。
また感情の高ぶり方も似たようなものがあり、一方は幸せ、一方は悲しみの儀式ではあるが、人を想い感極まる部分があるという意味では同じであり、いずれも人間は涙を流す。
音楽とは感情を表現するものというのが私の基本的な考え方であり、そういった意味では結婚式も葬式も感情状態としては実は非常に近く、BGMとして共通の曲が使えるということなのだろうかと思う。
もちろん葬式の場合は事故死など亡くなり方によっては和やかとはいかず、ただただ突然の悲しみに暮れるだけの心理状態の場合もあり、同じようなBGM選曲が通用するのかは分からないのだが、少なくとも共通で使える音楽があるという意外なことを発見し、一つ良い経験になった今回の依頼であった。