先日、中国のテレビのチャンネルを何気なくまわしていたら、貴州のテレビ局が流している貴州の観光プロモーションのような映像のバックに
聞き覚えのある音楽が耳に飛び込んできた。
そう、2002年の日韓ワールドカップの時に、ヴァンゲリスが作曲したあのテーマ曲「アンセム(賛歌)」である。
ヴァンゲリスはギリシャ生まれの作曲家ながら、韓国の太鼓のリズムと日本の琴の音をうまく融合させ、あの両国の文化をうまく繋げたテーマ曲を作ったものだと高く評価している。
彼は「炎のランナー」や「南極物語」などシンセ作曲の第一人者で、この曲もサッカーのテーマ曲らしく勢いがあり、しかもオリエンタルな匂いを失わない、ある意味21世紀の名曲のひとつであるような気がする。
そんな曲が何故?貴州のプロモーションビデオの中に?
これ、使用許可は取ってあるのだろうか?と、中国のご当地の著作権感覚への心配から、まずそこが不安になった。
まあテレビ局もこの国では国家機関であるからそのあたりの問題がクリアになっていないことはないだろうと私は信じたい。
ただ、よしんばこれが許可を取ってあるものだとしても、選曲のセンスには閉口する。
確かにあの曲は勢いのあって格好いい曲であるが、そこに歌われているのはあくまでも日本と韓国の文化である。
とても貴州のイメージがあるとは言い難い。当時、ワールドカップには中国も出場していたはずなので中国でも放送は当然流れただろうから、あのテーマ曲も流れていたに違いない。にも関わらず、この音楽の使用をするというのは、全くもって音楽センスがないと言わざるを得ない。
確かに表面上のかっこよさだけを繕って、音楽に含まれる文化を見ないというのはこの国の文化そのものではるが、それにしてもである。
違和感のある音楽の向こうに見えた貴州の映像はとても素晴らしい文化を持っているように見えただけにこの選曲はとても残念である。