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上海ワルツNEW



2009年06月15日 日本で11年働いたという経験の価値
 私は日本で日本人として生まれて、日本の学校に通い、卒業したあとそのまま日本の会社に就職したわけだから、日本で働いた経験があるというのは当然というべきか、意識してそういうキャリアを積んだわけではない。
 故にそれを改めてヴァリューピースとして切り抜かれてしまうととっても違和感があるのだが、こうやって外国へ来て見るとそうやって働いてきたことが一つの価値を持っていることに気づかされる。
 まあこれだけを持って求職活動をしても大した評価にはならないと思うが、実際に中国で働いていると、「仕事をする」ということに関して周りとの相対的な経験値の差が分かってしまう時がある。
 私は30代になってから中国へ来たのだが、上海に来ている現地採用の日本人は20代そこそこで中国へ来てしまっており、例え日本で働いたことがあるといってもせいぜい3年程度の経験でしかなかったりして非常に浅いものだ。
 言葉の能力の面や行動力の面では彼らに一歩も二歩も譲るが、「仕事をする」という意識の上では、まだまだ彼らは青いなと感じる部分がある。
 特に若いうちから中国に来てしまっている人は全般的にルーズな中国のビジネススタイルに慣れきってしまう場合があり、日本人といえどもどこかルーズな感覚が身についている。


 仕事の締切りに対する意識や、先の見通しの立て方や計画性、客先の難しい要求に対する応対など、お金をもらって仕事をするという価値の意識が弱く、お客の存在や会社全体の利益を忘れた仕事の仕方になってしまっている。
 そういった点が特に顕著に目立つのが、仕事の締切りに対する対応である。
期限をまたいでしまうこと自体、日本でもあることだが、日本だとその時点で説明がある。説明がなければ相手が説明を求めてくるというのが通常の対応だが、そういった仕事の基本的な「イロハ」が中国では一歩二歩くらいルーズになっている。
 それがお互いの習慣で慣れっこになっているので、例えば締め切り1ヶ月も遅れてしまえば別だが月を数日跨いだくらいの話は許容範囲になってしまっていて厳しい問い合わせをすることはまずない。
 日本だと1日でも遅れると担当者の責任問題になってしまうのだが、大手の外資系企業などはともかく、それほど大きくない企業だと管理側も含めて総じて中国的なルーズさがある。
 私も中国に来て3年が経ち、生来のルーズさも手伝って中国的なルーズさに流されそうな面もあるが、少なくとも仕事そのものを放ったらかしで無責任に忘れ去ってしまうことはなく、やり終えていない仕事はずーっと心にひっかかって残っていて余裕ができたら失礼の無いように客先に対して後処理をするようにしている。

 そういったお客の存在を意識して仕事をすることが、自分にとっては当たり前の心がけだと思っていても、日本で働いた経験が浅い人はその認識が不足している部分がある。今の中国であればそれでも通じてしまうが、いずれ上海などの大都市ではグローバルスタンダードが広がって、そのルーズさが許されない時期がやってくるはずである。そしてその変化は思いもよらず早くやってくる可能性がある。
 中国的ルーズさに一度染まってしまった日本人にとっては、環境が変わったからといって改めて襟を立て直すことは、中国人のように変化に対する適応力がないだけに、非常に難しいことのような気がする。
 こうやって将来の中国を想像して眺めてみると、日本で11年働いた経験は意外にも大きな価値を持っているかもしれないなと、中国で働いてみて改めて見つけた自分の価値である。









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プロフィール

1971年千葉生まれ。大学時代は水戸で過ごす。
高校時代テレビで見た高泉淳子に影響され演劇の世界に踏み入れ、以後アマチュア劇団で舞台音響専門として過ごす。就職は一般企業にするものの、趣味が高じて休日にブライダルで音響活動を続け500組近くのカップルを見届けてしまう。
自身は無類のクラシック音楽好きで日本時代は年間120本以上のコンサートに通った時期もある。
 また旅好きでもあり、日本47都道府県はもとよりイギリス、フランス、スペインなど舞台を求めて世界を旅した。
 数年前一つの恋がきっかけで中国語を学び始め、上海に渡ってきた。
まったくの新天地で営業職に日々悪戦苦闘中。


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